情動を解釈する人工知能

脳の情報処理プロセスを全て紐解けば、自我の所在に至るのか?


あなたを、あなたたらしめているモノとは何ですか?もちろん様々な意見があると思うのですが、一つのアイディアとしては、「記憶(Memory)」と「意思決定(Decision-Making)」があると思います。例えば、日常生活の中で、今、コーヒーと紅茶のどちらを飲むのかという選択のときに行われている思考活動を一つ一つ分解してみてください。私たちのほぼ全ての言動は記憶に基づいていますし、その記憶・経験に支えられて意思決定を行っています。

それでは、人間が近い将来、脳をサポートするための人工知能を搭載し、記憶や意思決定の一部をコンピュータに委ねるようになり、経験や能力もダウンロードが可能になった時、私たちのことを完全にコンピュータで再現することが可能なのでしょうか?もし無理なのだとしたら、その差分はどこにあるのでしょうか?これは、言い換えれば、「自我」や「意識」というもののメカニズムを探る神経科学であり、現代においてもほぼ全く答えが出ていない科学の一つです。

2015年にAlphaGo(アルファ碁)というディープラーニング型人工知能プログラムが世界トップの囲碁棋士との勝負に勝利したことが、Nature誌に取り上げられました。ある特定の分野ではヒトの脳機能を凌駕しはじめた人工知能を使って、「脳」という未知なる物体を理解しようという研究が世界各所で始まっています。私たちの研究グループでは、「情動」の理解に人工知能を用いることで、これまで注目できてこなかった情動の神経メカニズムの構成要素を発見できることを期待しています。