研究分野の概略

生物のデザインを決めるゲノムDNAは、地球上で最も重要な情報であるにも関わらず壊れやすい物質です。当研究室では、ゲノムの再生メカニズムとその不調が引き起こす細胞老化、がん化の機構を研究しています。

研究内容の紹介

ゲノムの再生メカニズムとその不調が引き起こす細胞老化、がん化機構

遺伝情報を担うゲノムDNAは化学物質や放射線に対して極めて弱い物質てす。生物は 進化の過程で、この弱いDNAを再生し、生命の連続性を維持する能力を獲得してきました。 しかし完全に直すことは不可能で、少しすつ「変異」が蓄積し、細胞は徐々に老化していきます。変異が細胞増殖に関わる遺伝子に生じた場合にはがん化することもあります。がん化はその細胞だけの問題ではなく、個体が死に追いやられることもあります。寿命が長い生殖細胞や幹細胞ではゲノムの維持が特に重要です。生殖細胞は次世代へ命をつなぐ重要な細胞です。また幹細胞も個体が生きている限り分裂し、新しい細胞を供給し続けるため、変異の蓄積は極力避ける必要があります。これらの細胞ではゲノムの「修復」では追いつかず、「再生」レベルの維持・管理が必要となります。我々の研究室では酵母、マウス、ヒト細胞を用いて、ゲノム再生の分子機構を特にゲノム中で安定性が低い反復配列「リボソームRNA遺伝子(rDNA)」に注目し研究しています。 さらにゲノムの不安定化を軽減し、老化およびがん化抑制に働く物質の探索も行なっています。共同研究等も幅広く行なっています。

生命の連続性の維持機構 酵母の母細胞(動物細胞の分化細胞に相当)は分裂のたびに老化してやがて死んでしまいますが、娘細胞(動物細胞の幹 細胞に相当)は逆に分裂のたびに若返り永遠に生き続けます。 そのときにゲノムは再生され元通りになります。同様の「若返り」現象が動物細胞の幹細胞や生殖細胞でも起こり、生命の連続性は維持されています。
rDNAは老化シグナルの発生源 リボソームRNA遺伝子は巨大反復遺伝子群を染色体上に形成 しています。その繰り返し構造により、異常な高次構造やリ ピート間の組換え、複製ストレスや活性酸素の影響を受けや すく、また外部からのDNA損傷刺激(放射線、化学物質など) にも弱い極めて「脆弱(ぜいじゃく)な領域」となっています。 そのためrDNAはゲノム中で「最初に壊れる領域」として老化 シグナルの発生源となっています

最近の研究成果

論文一覧

  1. Ribosomal RNA gene repeats, their stability and cellular senescence.
    Kobayashi T.
    Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci. 2014 Apr 11;90(4): 119-129. doi: 10.2183/pjab.90.119.
  2. Cellular Senescence in Yeast Is Regulated by rDNA Noncoding Transcription.
    Saka K, Ide S, Ganley AR, Kobayashi T.
    Curr Biol. 2013 Sep 23;23(18):1794-8. doi: 10.1016/j.cub.2013.07.048.
  3. Regulation of ribosomal RNA gene copy number and its role in modulating genome integrity and evolutionary adaptability in yeast.
    Kobayashi T.
    Cell Mol Life Sci. 2011 Apr;68(8):1395-403. doi: 10.1007/s00018-010-0613-2.
  4. Abundance of ribosomal RNA gene copies maintains genome integrity.
    Ide S, Miyazaki T, Maki H, Kobayashi T.
    Science. 2010 Feb 5;327(5966):693-6. doi: 10.1126/science.1179044.
  5. The effect of replication initiation on gene amplification in the rDNA and its relationship to aging.
    Ganley ARD, Ide S, Saka K, Kobayashi T.
    Mol Cell. 2009 Sep 11;35(5):683-93. doi: 10.1016/j.molcel.2009.07.012.
  6. Recombination regulation by transcription-induced cohesin dissociation in rDNA repeats.
    Kobayashi T and Ganley ARD.
    Science. 2005 Sep 2;309(5740):1581-4. doi: 10.1126/science.1116102.
  7. SIR2 regulates recombination between different rDNA repeats, but not recombination within individual rRNA genes in yeast.
    Kobayashi T, Horiuchi T, Tongaonkar P, Vu L, Nomura M .
    Cell. 2004 May 14;117(4):441-53. doi: 10.1016/S0092-8674(04)00414-3
  8. Transcription-dependent recombination and the role of fork collision in yeast rDNA.
    Takeuchi Y, Horiuchi T, Kobayashi T.
    Genes Dev. 2003 Jun 15;17(12):1497-506. doi: 10.1101/gad.1085403
  9. Expansion and contraction of ribosomal DNA repeats in Saccharomyces cerevisiae: requirement of replication fork blocking (Fob1) protein and the role of RNA polymerase I.
    Kobayashi T, Heck DJ, Nomura M, Horiuchi T.
    Genes Dev. 1998 Dec 15;12(24):3821-30. doi:10.1101/gad.12.24.3821
  10. Evidence of a ter specific binding protein  essential for the termination reaction of DNA replication in Escherichia coli.
    Kobayashi T, Hidaka M, Horiuchi T.
    EMBO J. 1989 Aug;8(8):2435-41..
小林 武彦 教授
Takehiko Kobayashi
理学博士
理学系研究科・生物科学専攻
飯田 哲史 助教
Tetsushi Iida
博士(理学)
理学系研究科・生物科学専攻
佐々木 真理子 助教
Mariko Sasaki
博士
理学系研究科・生物科学専攻
デフォルト画像
大屋 恵梨子 助教
デフォルト画像
朝倉 智子 技術専門職員
Tomoko Asakura