主要な研究テーマ


 本研究分野では、大腸菌やシアノバクテリアなどのバクテリア、藻類や高等植物、およびそれらのオルガネラである葉緑体を主な研究材料として用い、下記4テーマを研究の柱とし、根本的な生命現象である細胞増殖、細胞分化、環境応答などに関わるシグナル伝達や転写調節について研究を行っている(図1)。下記各テーマごとの説明の他、こちらからも研究概要をまとめた PDF ファイルがダウンロードでき、研究概要がご覧になれます。

(1) バクテリアの RNA ポリメラーゼシグマ因子の研究

(2) 核・オルガネラコンソーシアムによる真核細胞の構築原理の研究 

(3) 葉緑体分化の制御機構の研究

(4) 植物細胞における染色体維持機構とシグナル伝達系

              図1. 研究の全体像

 あらゆる細胞はゲノムにコードされる遺伝子の発現を、必要に応じてオンオフして生きている。この発現の大枠はRNAを合成する転写段階で決められており、バクテリアではRNAポリメラーゼのサブユニットであるシグマ因子群が、その鍵を握っている。シグマ因子による転写特異性の制御は、細胞の危機的な状況や、細胞分化の際に特に大きな役割を果たす。我々はこのような視点から、炭素や窒素などの栄養枯渇に応答するシグナル伝達系や、増殖定常期への移行、それに伴う耐久細胞への分化などについて、大腸菌やシアノバクテリアを用いた解 析を行っている(研究テーマ1)。

 生命の歴史の中でバクテリアは細胞内共生を通じ、ミトコンドリアや葉緑体として真核細胞の形成にも関与してきた。このような形成過程は、共生した当時の始原的な性質を維持した真核細胞を用いることで明確に捉えられると考えられる。このような視点から当研究分野では、核、ミトコンドリア、葉緑体を各一個しか持たない原始紅藻(Cyanidioschyzon merolae)を用いた研究を行っている(研究テーマ2)。この原始紅藻については最近全ゲノム配列の決定を終了し、より一層の研究の進展が期待される。

 オルガネラとして真核細胞に組み込まれながら、葉緑体はバクテリアの性質を色濃く残しており、そこではバクテリア型のゲノムやRNAポリメラーゼが活躍している。私達はこれまでに、葉緑体で機能するシグマ因子が核ゲノムにコードされていることを発見し、解析を進めてきた(研究テーマ3)。葉緑体は植物の器官や環境により様々に分化した形態を示すが、この葉緑体分化にシグマ因子を介した転写制御が重要であることを明らかにしつつある。さらにシアノバクテリア、藻類、高等植物へと進化の段階を追い、光合成遺伝子の環境やストレスに応答した発現のしくみや、遺伝子発現系の進化についても詳しく調べている。

 他方、田村助手を中心とした研究グループでは、植物細胞の増殖を支えるテロメラーゼ活性の調節機構や、植物核ゲノムの二本鎖DNA切断の修復機構についての解析を行っている(研究テーマ4)。オーキシンに応答したS期特異的なテロメラーゼの活性化の発見や、シロイヌナズナ・イネからの植物で最初のテロメラーゼ触媒サブユニット遺伝子の同定・解析などが、その成果として挙げられる。


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